信頼できる介護保障を

はつらつレポートNO.115より

訪問介護事業者コムスンの不正請求事件は大きな衝撃を与えました。高齢者の尊厳と自立支援を目的とした介護保険制度を悪用したことは決して許されるものではありません。しかし、この事件は氷山の一角とも言え、介護保険制度の構造的課題や運用の問題点を改めて浮き彫りにしました。  
 
利用者のニーズから遠のく介護サービス 
 昨年4月からの改正介護保険の実施により、利用者からも様々な困惑と不安の声が上がっています。たとえば、日中はいつも一人きりになる利用者でも、同居家族がいる場合は、家事援助サービスが受けられなくなった、訪問時間も減らされたことで、出来るだけたくさんの仕事をこなそうと忙しそうなヘルパーに声がかけづらくなり、体調の変化や希望や要望を伝えるための会話も少なくなった、という声もあります。

生活が成り立たず離職するベテラン介助者 
 一方事業者も、利用時間数の減少などによる収入減で、経営が厳しくなりました。働く人の賃金を切り詰めることでやっと成り立つ事業所も少なくありません。経験を積んだ介助者でも報酬が少なくなり、身分の保障もなく、生活が成り立たないので離職するという人が後を立ちません。
 また、介護が重度化し、24時間ケアへのニーズが高まっています。地域密着型の小規模多機能などのサービスが始まりましたが、担い手不足が続いています。これらの公的サービスには十分な財源が必要です。

利用者の権利を守るしくみを
 生活者ネットワークは、「誰もが住みなれた地域で自分らしく暮らす」ための提案を行ってきました。介護を社会全体で担うための制度という原点に帰り、家族介護に押し戻すのではなく、在宅で暮らすための支えとなれる、利用者の立場に立った制度にしていくことが求められます。
 利用者、事業者、保険者(国、市町村)がそれぞれの立場で知恵を寄せ合って制度を充実させるとともに、行政は介護保険とは別の介護保障の充実もすすめるべきです。

私たちの提案
【国に求めること】
〇ヘルパーの所得保障を行い待遇を改善すること。
〇ケアプラン作成事業は、施設・在宅支援事業との併設ではなく、独立して経営できるようにすること。
〇不正請求をしにくくする請求システムに変えること。
【市に求めること】
〇認定調査は施設・在宅を問わず、公平な客観判断が出来る独立した形にすること。
〇利用者が望む介護サービスのためにも、気軽に苦情申し立てを保障する第三者機関として、オンブズパーソン制度をつくること。