どこまでいくのか 日本の貧困

NPOもやい・湯浅誠さん講演会

NOと言えない労働者・壊れる労働市場
非正規雇用の労働者が雇用の調整弁として都合よく使われ、日雇いなど細切れの不安定な雇用形態で働く人は将来が描けません。しかし、資産や頼れる人もなく、働かなくてはすぐに食べられなくなる人は、不利な条件でも我慢して働かざるを得ません。

一方、正社員も年収340万で正社員と同じような仕事をする契約社員と比較され、過重な労働を強いられるという状況の中では、まさに過労死か貧困かの2者択一を迫られているようなもので、正社員=勝ち組というわけではなさそうです。

総務省の調査をみても、週間就業時間35 時間未満および週60 時間以上の割合がそろって上昇しており、短時間就業と長時間就業の二極化が進んでいることがわかります。

また、正社員でも年収300万以下の「なんちゃって正社員」や「名ばかり管理職」といわれるような周辺的正社員が3割にのぼり、今まで労働市場の外(失業者)にあった貧困ラインが正規雇用の人にまで拡大しています。

社会保障削減の政策が生活保護を増やした

セーフティネットには①雇用のネット、②社会補償のネット(年金、健康保険、雇用保険、労災など)③公的扶助のネット(生活保護)がありますが、社会保障費を毎年2200億円削減する国の政策の中で、雇用保険4.9兆円の国庫負担は半減し、全廃する流れにあります。受給資格も厳しくなり、10人に8人の人が失業保険をもらっていないそうです。

年金はうっかりすると消えているし、社会補償のネットも穴だらけです。(でも、働く人は怒らないのはなぜ?)
蓄えのない世帯はたちまち貧困への道をまっしぐら、3段階目の公的扶助のネットである生活保護のお世話になるしかありません。社会保障のネットが機能しないことが生活保護の受給者を増やしているといえます。

今は家族が支えているが…貧しい公的セーフティネット

さらに生活保護のネットの下には東京23区の人口に匹敵する850万人がいると考えられています。生活保護の中でも老齢加算や母子加算が廃止されて、セイフティーネットの穴がますます大きくなり、ますますこぼれ落ちる人が増えていくことが予想されます。それが大きな問題にならないのは、家族という私的セイフティーネットが支えているからですが、親世代が代替わりしたら大量の貧困層が出現します。

貧困はみんなの問題!

母子世帯の母親は就業率83%で世界で一番よく働くが、収入は一般世帯の3分の1しかありません。そもそも、若者のワーキングプアー問題が浮上する前に、女性は家計の補助的な労働力と見なされ、不安定で低賃金な働き方をしてきました。一家の大黒柱として働く母親には厳しい環境です。母子世帯の問題は特定の限られた人達のことだから、自分には関係ないと思っている人も多いのかもしれません。しかし、今や1345万人のパート労働者の3割は男性で低賃金労働が若者・男性にも拡大している現状です。多くの人にとって人ごとではありません。

湯浅さんが事務局長を務める「反貧困ネットワーク」では、総選挙を控え、各政党に要望書を提出しています。内容は①労働派遣法の抜本的改正②社会保障費年2200億円削減方針の撤回③生活保護基準の引き下げ④貧困層の削減目標の設定です。

あらゆるデータが貧困層の広がりを示している今日、貧困は自己責任でなく政策的・構造的に作られたものとして捉え、あってはならない問題としてみんながフツーに怒りの声を上げていくことが必要だと改めて感じました。